結婚観の相違

何度もデートを重ねて、ある程度お互いの性格や笑いのツボなんかもわかってきた。
デートはもっぱらお互いの仕事が終わってから、軽く食事をしながらという日々。休日には遠出のドライブなんかも楽しんだ。年齢はひと回りも違っていたけれど、お互い大人同士だから特に違和感を覚えることもなく、彼女と出会ってからの日々は本当に楽しい毎日だった。若い頃の恋愛なら、ただ楽しいってだけでOKだったんだろうけど…。やっぱり今の心のモヤモヤをハッキリさせなければ彼女に対して失礼だよね。

恋人探しをしていたんじゃなく、結婚相手を探していたんだもんね。婚活パーティーで出会った二人にとっては、やっぱ「そこ」に到達できる相手なのかどうなのかっていうのが大切だもんね…。
あれ以来、彼女の方からそのことを聞いてくることはなかった。「そのこと」とは、つまり、僕の過去の離婚理由についてのこと…。「結婚」を目指すのであれば、絶対に解決しておかなければならない大切なことだもんね。僕は意を決して…、ってほど大げさではないけれど、彼女とちゃんと向き合うことを決めたんだ。ありのままを話した。奥さんにはできるだけ家にいて欲しいってこと。一日も早く子どもが欲しいってこと。家に帰ったら、子どもと奥さんが「おかえり」って迎えて欲しいこと。彼女は真剣な顔で僕の話をちゃんと聞いてくれた。

「気持ちはとってもよくわかるし、そういう家庭が理想だなって気持ちもあるよ。でも、今自分がしている仕事にも誇りがあるし、女だからって理不尽な処遇をされるのにも納得がいかない…。」
「今の自分にとって、仕事を無くすことは目標を無くすことになっちゃう。」
「もちろん、結婚もしたいし、子どもも欲しいと思ってる。」
「でも、そのために今の仕事を諦められるかどうかは…。」
そう言って彼女は押し黙ってしまった。
僕は「すぐに結論を出して欲しいなんて言わないし、僕なんかのために夢を諦めてくれなんて言えない。でも、ゆっくり考えて欲しい。」と言った。

彼女は「うん。わかった。」と言って笑ったけど、いつもの笑顔とはチョットだけ違ってたなぁ…。